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『アーカイブを纏う人・建物・街』を終えて、『アーカイブ』を考える対話(前半)

『アーカイブを纏う人・建物・街』を終えて、『アーカイブ』を考える対話(前半)

『アーカイブを纏う人・建物・街』を終えて、『アーカイブ』を考える対話(後半)はこちら

北川浩明さんによるレクチャー『アーカイブを纏う人・建物・街』Seek-machinami02-2を終えて、しばらく経ったある日のこと。
チャット上で、レクチャーの内容をさらに踏み込んで、『アーカイブ』をめぐる様々な対話が、参加者の間で行われました。到底一言で要約できるものではない長大な内容ですので、その全文を掲載します。
勉強会02-1からの続編 『アーカイブ』について考える対話です。



「西洋は、過去の事物を大切に保存し残していく、といったアーカイブの文化があるのに対して、日本は、諸行無情やスクラップアンドビルドといった言葉に表されるような、過去のものを残さない文化である」といった文化比較の構造に疑問が投げかけられるところから、議論が展開していきました。

三木さん
山口さんの出してくれた民族の話(注:アヴァンティップ族は自らの痕跡を残すのではなく、消す文化を持っているというエピソード)は身を守る上で自分たちの痕跡を消さざるを得ないということはわかります。 だとすれば、痕跡を残す(アーカイブできる)われわれは、敵(のような存在)が居ない穏やかな世界に生きている ということにもなります。 けれども、敵が現れることもある。 先日母が観た映画の話をしてくれました。 『華氏451』(監督:脚本:フランソワ・トリュフォー) その世界では文学が危険視され、本をすべて焼くというという世界になったようです。 ”焚書隊が出動する。 現在の消防隊の姿に似ているが、目的はまったく違う。 物語の時代は書物を禁じた世界。 焚書隊は書物を見つけ次第火炎放射器で焼き尽くすのが使命である。”
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%AF%E6%B0%8F451
話がそれそうですが、 要するに、「アーカイブできる世界」というのにも今回初めて気がつきました。 確かに中国では政権が変わるたびに前の文化を捨て去ってきたとも習っています。 なので「アーカイブ」することの意味 しないことの意味 「アーカイブ」する、しないという議論は一つありますが、その背景としての社会についても意識的になりました。 それで細尾さんが感想で書いてくれたように、「多様性が保持されることこそが街や社会を考えていく上で、 一番大事な理念になるんじゃないかと思います」という点がキーセンテンスだと私も思います。 数の多少に関わらず、多様多種であることがもしかしたら「強さ」にもなるかもしれない。 とりあえず このあたりが私の北川さんのレクチャーから考えたことです。 ちなみに私は日本=諸行無常感とは思いません。日本に渡ったことで成熟していった文化が沢山あります。 ある意味シツコイというか、考えて活かすことを続けてきた民族かもしれません。 最近知人が言っていました。「日本人が発明したものは数が少ない。 日本人は0から物を生み出した歴史はほぼ無いのではないか」と。 これも突っ込みどころが多く話がそれそうです。とりあえず一旦「アーカイブ」という語の1つの意味を「多様性内包」と置き換えておくとすっきりします。

北川さん:三木さんのご指摘の通り、僕が言った『山口さんが出してくれたアヴァンティップが自然環境に痕跡を留めることを嫌うのは、敵対する集団に待ち伏せと襲撃の機会を与えてしまうからで、人工的な町での住まいかた、痕跡の残し方とは少し違ってくるのではないか』という意見は早合点で、確かに町の中に敵がいないとは言えないですね。
三木さんがいう「アーカイブできる世界」と(したくても)できない世界が時と場所に寄ってはあるというのは、本当にそうだと思います。(その前にアーカイブする世界、しない世界という議論もあるかもしれません) 華氏451は僕も見ましたが、あの映画で僕が面白かったのは、最後、本が焼かれた後、ある隠れ集落みたいな所で一人一人が1冊の本を丸暗記して次の世代に語り継いでいくというところですね。人自体が本(の代わり)になる。本がなくなっても別の仕方でアーカイブをしだすというように僕は捉えました。
細尾さんの「多様性が保持されることこそが街や社会を考えていく上で、 一番大事な理念になるんじゃないか」という意見、僕も同意します。
上記の話も踏まえて、今の日本がアーカイブできる世界なのか、そうではないのか、日本人がアーカイブをするのか、しないのか、アーカイブの仕方が違ってきているのかなど、皆の意見を聞きたいと思います。
少し補足しときますと、城壁に囲まれたイタリアの町の中(敵がいない前提でアーカイブし易い?)と現代日本の町(疎遠な関係、対人恐怖症、仮想敵etc)とではアーカイブの現れ方が随分違ってくるのかと思います。 人間同士の関係、コミュニティがアーカイブを形成しているようにも思います。

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# by machinamiproject | 2014-11-30 01:10 | Seek machinami

Seek machinami 02-2 無事開催できました

02-2 『都市の生成とマーケット』  -戦災復興・都市再生のメカニズム- 無事開催できました。
レクチャーをしていただいた石榑さん、参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。
Seek machinami 02-2 無事開催できました_b0150748_1552142.jpg


参加者の皆様にはこれから感想や気づきについてご意見を集めさせていただきます。

今回の勉強会のまとめに関しましては後日このページに載せさせていただきます。
# by machinamiproject | 2014-09-10 15:52 | Seek machinami

Seek machinami02-2 開催決定

『都市の生成とマーケット』  -戦災復興・都市再生のメカニズム-

『盛り場はヤミ市から生まれた』の共著者である近代都市史の研究者、石榑督和さんに、長年の闇市研究のフィールドワークを通して観察した、日本の近代都市の生成とマーケットについて、スライドと共にお話ししていただきます。

前半は石榑さんの全国的なマーケットに関するレクチャー、後半はレクチャーを踏まえ参加者の皆様と京都の都市の生成についてなど、比較・議論ができればと思います。

日時: 9月7日(日)
開場: 18:45
開始: 19:00~
場所: レンタルスペース「月の花」2階
    (京都市下京区 綾小路通 堺町 東入ル 綾材木町 206-1)
    四条河原町より徒歩5分。
会費: ¥500
定員: 15名ほど


戦災復興期、日本各地の駅前や商店街の一角に「マーケット」と呼ばれる店舗が集合した市場状の建物が建設され、都市再生の一端を担いました。マーケットは戦災復興期の商品交換の中心地となり、経済統制下では闇値での取り引きが行われていたため多くは闇市の場となり、そして現在もその面影を残す建物が日本各地に存在します。レクチャーでは、戦後の焼跡から都市がいかに再生したのか、そのメカニズムをマーケットや闇市に注目しつつ議論し、また東京都区部にかつて存在した281のマーケットを対象として当方が行っているフィールドワークについても紹介し、戦後復興期以降のマーケットの変容と現在についても議論できればと考えています。

Seek machinami02-2 開催決定_b0150748_14135973.jpg


プロフィール
石榑督和(いしぐれ・まさかず)
明治大学大学院理工学研究科博士後期課程(〜2014年9月)。明治大学兼任講師(2014年9月〜)。
1986年岐阜県生まれ。明治大学卒業。近現代都市史・建築史。
共著に『盛り場はヤミ市から生まれた』(青弓社)ほか。
# by machinamiproject | 2014-08-18 01:51 | Seek machinami

02-1 『アーカイブを纏う人・建物・街』 無事開催できました。

『アーカイブを纏う人・建物・街』 無事開催できました。
レクチャーをしていただいた北川さん、参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。

アーカイブということをテーマにしてお話いただいた内容は、多岐にわたる事例でありながらも、
すべてが気になる事柄の連続で、集まったみなさんと思考しながら次へ次へと議論が進む楽しさを改めて体感しておりました。

ちょっとしたまとめもかねて、Hosooがレクチャーの感想を書かせていただきます。


北川浩明さんによる『アーカイブを纏う人・建物・街』のレクチャーは密度の濃いものでした。
ピーター・アイゼンマンの「建築は先例の変形である。」という言葉が、冒頭に紹介されていましたが、既に存在しているものが絶え間なく、刷新・変質され、それらが重複、堆積していくなかで、豊かで多様性を内包するアーカイブが形成されていく、という一連の運動を肯定的に見つめ直しながら、レクチャーは進行していきました。

狭義の建築や都市についてだけでなく、街のなかでの人々の活動や振る舞いから、ファッションの話しにいたるまで、様々なテーマが話題に挙がったのですが、そのなかでも、「特徴のある多くの顔を重ね合わせて出来る標準顔は、美人の顔になる」というエピソードと、それをめぐる議論のなかに、重要なことが隠されていたように思われます。

標準顔には、多くの色んな顔のレイヤーが含まれていて、顔の好みの異なる様々な人が見ても、それぞれの好みに対応するレイヤーが中に潜んでいる。したがって、標準顔が美しく見えるのは、その中に多様性を内包しているからではないかと、ある参加者の方が述べられ、僕はなるほどな、と腑に落ちる思いがしました。

北川さんが、誰もいない駐輪場で、クラッシックギターで「アラビア奇想曲」をひっそり練習している中年男性を目撃したことに触れられました。こういったマイノリティの様々な活動(=微弱なる電流)が抑圧されず、自然に表出されていくような社会にしなきゃいけないんじゃないかと話されていたのですが、「多様性が保持されること」こそが街や社会を考えていく上で、一番大事な理念になるんじゃないかと思います。そしてそれは、「リベラルであること」、と言い換えられるのかもしれません。

京都は比較的、多様性を自然に内包できている街なんじゃないかと思います。

東京から京都に移住された方がおっしゃっていたのですが、「素人の乱」(東京の高円寺を中心に繰り広げられている、貧乏な生活を守ることをテーマにした運動)的なものが、京都では、声高に唱えられなくとも、自然に存在している、のだそうです。
また、坂口安吾があるエッセイの中で、1930年代の京都で、くすぶって暮らしていた頃のことを振り返って、「京都では、自分のような訳のわからない三文文士でも先生と呼ばれ、あれこれ詮索せれず、2/3人前位に扱ってくれる」といったことを書いていましたが、京都が、マイノリティが抑圧されない、風変わりなものや微弱なものが、自然にいることができるような場所であるならば、それを維持していくことこそが、京都のまちづくりなんだと感じました。

そうした文脈で、京都における町屋の保存や活用も、街の多様性が保持される為の動きだという意見を聞いたので、僕はなるほどな、と思ったのでした。

Hosoo

参加されたみなさまも、その後の気づきやさらなる疑問など、なんでもご意見お聞かせください。



02-1 『アーカイブを纏う人・建物・街』 無事開催できました。_b0150748_085185.jpg

# by machinamiproject | 2014-04-29 00:13 | Seek machinami

Seek machinami02-1

Seek machinami02-1_b0150748_1648588.jpg
アーカイブを纏う人・建物・街


2014年4月27日 18:30 ~
Seek machinami! 02-1 を開催します。
今回はゲストをお招きしてお話をお聞きし、それによって得る新しい視点をみんなで共有してみたいと思います。
昨年末に日本の山間や海の集落に思いを馳せたのですが、
この春はまったくの別世界、海外の街や棲まいについて視点を遠くへ飛ばそうと思います。

そこで今回はイタリア、ミラノの建築設計事務所で長年勤務され、先日日本に帰国された建築家の北川浩明さんに、「archive」というキーワードを通して観察した、ヨーロッパの都市の様々な現象を、スライドと共にお話ししていただきます。

後半では、前半の北川さんのレクチャーを踏まえ参加者の皆様と考えを交換していければと思っています。
分野、年代にとらわれない多数のご参加をお待ちしております。


会場 radlab.  604-8005 京都市中京区恵比須町531-13 3F

開場 18:00 開始 18:30
会費 500円 
# by machinamiproject | 2014-04-21 01:18 | Seek machinami


町並・景観についての意見交換・勉強したものを公開します


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